■こちらのサイトはアフィリエイトサイトとなり広告を掲載しています。
なぜ10年働いた歯科医師を辞めたのか?現場で感じたやりがい・楽しさ・辛さ・今後のキャリアプランについて、元歯科勤務医の女性に聞いてみた
※歯科医師のインタビューを基にした、寄稿記事です
私は歯科医師免許を取得後、勤務医として約10年間勤めてきました。しかし現在は歯科医師をリタイヤし、新たな分野で仕事をスタートしています。
「本当に歯科医師を辞めて良かったのか?」と問われると、やはり心のどこかでそれを悔いる気持ちがないと言えば嘘になります。
なぜなら私は決して歯科医師という仕事が嫌いで辞めたわけではないからです。
今回は私が歯科医師を辞める道のりの中で感じた仕事を続ける難しさや反省点、さらに今後活躍する女性歯科医師の方へのアドバイスなどをお伝えしようと思います。
私が歯科医師を辞めた理由
今でも周りの人に「もったいない」「絶対後悔するよ」など言われることがあります。そんな時に「取り返しのつかないことをしてしまった」という思いに駆られてしまうこともしばしばです。
それでもやはり私には、「歯科医師を続けられない」と思う確固たる理由がありました。そのすべてをここで述べることはできませんが、特に大きなポイントになった3つの理由をお話ししていきましょう。
①不透明だったキャリアプラン
私が歯科医師を続けられなかった最大の要因は、免許を取得してからその先のキャリアプランを、自分がきちんと考えていなかったことだと今にして思います。
歯科医師は資格さえ取ってしまえば「そのままずっと歯科医師でいられる」と錯覚しがちです。
しかし歯科医師であり続けるためにはスキルアップが常に必要であり、またその過程の中でいつも順調に階段を登り続けられるとはかぎりません。
私の場合は結婚や出産などのイベントごとにスキルアップの機会を先延ばしにしてしまい、そのことが後々になって仕事の継続に支障をきたすようになりました。
「結婚するまでにここまで」「出産までにここまで」ときちんとキャリアプランを立てておけば、もっと違う方向へ進めたのではないかと後悔しています。
②将来の歯科医師像が見えない
上記のような中で、やがて私は同期や後輩たちとのスキルやキャリアに対する意識の差をはっきり感じはじめてきました。
それでも自分に「こんな歯科医師になりたい」という理想像があれば、時間はかかってもそれを目指してもう少し努力できたでしょう。
しかしキャリアプランにおいて自分が将来どのような歯科医師を目指すのか明確にしていなかった私は、この時点で全くその像がイメージできなくなってしまったのです。
それでも仕事は続けていましたが、当時は育児との両立の中でただ与えられた仕事をしているだけの状態。
「本当にこのままで良いのか」「自分はどうすべきなのか」と混沌とした日々を送っていました。
③人生の優先度の変化
様々な思いや葛藤の中、歯科医師を辞める決定打となったのが子供の存在です。
きっかけは子供の習い事。その頃私はフルタイムで働いていましたが、その習い事をきっかけに週に1日だけ短時間勤務をお願いして、子供の送り迎えをしていました。
その習い事は子供のたっての希望だったこともあって上達も早く、数々の賞をいただけるまで実力を伸ばしました。
しかし実は子供が習い事に励んでいたのにはもう1つ理由があり、それが「私と一緒にいる時間が増えること」だったことを知って大きな衝撃を受けたのです。
0歳から保育園、そして小学校にあがると学童保育と確かに子供と過ごす時間は少なかったのですが、ただそのことに子供から文句1つ言われたことはありませんでした。
しかしやはり子供にとってそれは寂しい時間だったのだなと、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
ここで私自身が仕事に生きがいや目標を持っていれば、まだ救いようもあったでしょう。
しかし当時の私は先に述べたように歯科医師としての情熱も失いかけていた頃で、そんな中で子供にこんな思いをさせてまで仕事をする意味がわからなくなりました。
この時点ではっきりと「歯科医師を辞める」という選択肢が私の中に生まれたのです。
歯科医師のやりがい・楽しさ
冒頭で述べたように、私は歯科医師の仕事に嫌気がさして辞めたわけではありません。すぐに辞められなかったのも、歯科医師という仕事に魅力を感じていたからです。
私が勤務した年数は10年と決してその経験を誇れるものではありません。その少ない時間で私が感じてきた歯科医師のやりがいや楽しさを、皆さんにお伝えしたいと思います。
辛い思いをさせても、最後には「感謝の言葉」をいただける
歯科医師の仕事は疾患を治し機能を回復させることもさることながら、その治療の中で患者様に苦痛を与えないことも職責の1つです。
とはいえ、「これまで一度も患者様に痛みを感じさせたことはない」と豪語できる歯科医師は、おそらく1人もいないでしょう。
しかしたとえ患者様は痛みを感じても、適切に治療がおこなわれれば最後には必ず「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えてくれます。
数多くある仕事の中でも、人に辛い思いをさせて感謝の言葉をいただける仕事はそう多くはありません。
歯科医師はどんなに難しい治療に悩まされても、患者様の最後の「ありがとう」の一言で救われます。
ありきたりな表現になりますが、この感謝の言葉をいただくことこそ、歯科医師の最大のやりがいと喜びだと私は思います。
スキルアップは「自分自身を磨くこと」
歯科医師の仕事に限らず、自分のスキルを磨くことはそのまま自分自身を磨くことにつながります。
なぜ技術を高めたいのか。少なくとも歯科医師の場合は「患者様に良質な医療を提供したい」という情熱がその根底にあります。
裏を返せばその情熱が沸き上がらない限り、技術向上のモチベーションは維持できないということです。
日常生活において「誰かのためにスキルアップしたい」と考える機会はそれほど多くはありません。この「誰かを思う気持ち」ほど、自分自身を磨いてくれるものはないでしょう。
歯科医療から学べる生き方
歯科医院には赤ちゃんからお年寄りまで、様々な業種や人生経験をお持ちの方が来院されます。これほど多種多彩な人間が集まる場所も、そうそうあるものではありません。
私も決して長くはない歯科医師人生の中で、色々な方との出会いを経験してきました。
人対人である以上、時に嫌な思いをすることもありましたが、それも1つの経験として学んだことも多かったと思います。
その経験の1つ1つが私の人生の糧となり、今につながっていることは間違いありません。
女性歯科医師に立ちはだかる壁
同じ歯科医師であっても、やはり女性と男性とでは仕事を続けていくうえで立ちはだかるものは異なります。
私は女性ですので、ここでは女性歯科医師だからこそ抱える困難やその時に感じたことなどをお話ししていきたいと思います。
結婚・出産などのライフイベント
「男女共同参画社会」が謳われてから長い年月が経った今日に至っても、やはり女性のほうがライフイベントによって仕事の継続に支障をきたしやすいのが実状です。
会社員と結婚した私の場合、夫の転勤ごとに私も転職を余儀なくされました。初めのころは「資格があればどこでも働ける」と楽観していましたが、それは甘い考えだったと後に痛感します。
確かに歯科医師の業務内容自体は働く場所によって大きな違いはありません。
ただやはり勤務する医院によって仕事のやり方や考え方が異なり、転職ごとに意識転換が必要となります。それがこれまで一貫してきたスキルアップにも大きな影響を及ぼしてしまうのです。
さらに女性の場合は、どうしても出産によって一時的に勤務から離れざるをえなくなります。私の場合は不妊治療をしていたため勤務時間を変動しなければならなかったことも多く、その間スタッフや患者様に迷惑をかけてしまうことも苦痛に感じました。
育児との両立の難しさ
夫が転勤族であるため、私の周りには身内など頼れる人がほとんどいません。仕事を続けるうえで大きな壁となったのが、育児との両立です。
夫のほかに助けとなる人がいない状況では、仕事に復帰しても子供が小さいうちは勤務が不規則になります。子供の病気もさることながら、台風などの自然災害で休園、休校となっても仕事を休まなければならないというのも意外な盲点です。
幸い育児に対して非常に理解のある院長の下で働けたため、職場のサポートを受けながら何とか両立を果たせました。とはいっても他のスタッフへ負担をかけてしまうことはとても辛く、何度も「仕事をあきらめよう」と考えたのも事実です。
またこのような状態ですから、スキルアップは夢のまた夢。初めての育児との両立だけで精一杯で、とにかく今持っている知識や技術を維持することだけを目標に働く毎日でした。
女性が歯科医師として活躍するうえで「家族の支え」は不可欠
夫婦二人きりでの育児の中、子供の事情でどうしても仕事を休まなければならない時は、夫も自身の都合が付けば私の代わりに子供の面倒をみてくれました。その点は今でも夫に感謝しています。
しかしそれでも身近に夫や自分の家族がいてくれたら、どんなに楽かと思わない時はありません。同僚の女性歯科医師が自身の両親に子供を預けて精力的にセミナーなどに参加するのを、いつも羨ましく感じていました。
もちろん近年はベビーシッターをはじめ民間の保育サービスも充実し、私も何度も利用して助けれられたこともあります。
ただ、子育ては「何事も予定通り」というわけにはいかず、予期せぬハプニングには自分たちで対応せざるをえません。
これらの経験から言えることは、「女性が歯科医師として働いていくうえでは、それをサポートしてくれる家族が一人でも多いほうがよい」ということです。
新たな「歯科医師ライター」としての道
歯科医師を辞めた私は現在、医療系、特に歯科医療分野をメインにしたライティングの仕事を在宅でおこなっています。
歯科医師免許を取得したからには、皆さんにはぜひ歯科医師の仕事に従事しし続けて欲しいと願っています。しかし中にはやむにやまれぬ事情によって歯科医師の道を断念しなければならない状況に陥ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。
そのような方にとって私のような例が何かの参考になればと思い、簡単ですが現在の仕事についてご紹介したいと思います。
現在の仕事をはじめたきっかけ
子供との時間を大切にしたいという思いが強くなったとはいえ、それでも当初は育児とうまく両立できる方法を模索していました。
しかし当時住んでいた地域には歯科医師の求人自体が少なく、まして短時間勤務を希望できるところもありません。そんな中で時間だけがむなしく流れていきました。
ちょうどそんな時、ある友人から在宅でなら子供との時間を作りやすいこと、クラウドソーシングを介せば何か見つかれれかもしれないことをアドバイスされたのです。
「歯科医師が在宅でできることがあるのか?」と試しに探してみたところ、見つかったのが医療関連の記事執筆の仕事。
報酬はわずかでしたが、もともと文章を書くことは好きだったし、何もしないよりはとチャレンジすることにしました。
当時はまさかそれが第二の仕事となるとは考えてもみませんでした。ただ幸いにして良いクライアント様達との出会いに恵まれ、何とかこの仕事を軌道に乗せることができ、現在に至っています。
歯科医院と患者様の架け橋になりたい
当初は一般の方向けの医療情報記事が中心でしたが、そのうち歯科医院のホームページ関連の仕事が増えてきました。
その中で気づいたのは、せっかく素晴らしい理念や技術、設備を持っていながら、それをうまく人々に伝えられていない歯科医院が多いことです。
そしてその理由が、伝えたくてもうまく言葉にできない、またはそうしたくても日々の業務に追われて時間がないこともわかってきました。
でも私は正直「もったない」と感じています。なぜなら実際にその歯科医院の理念や技術を必要としている方は大勢いらっしゃるはずで、そのような方に来院してもらうことは、歯科医院にとっても大きなメリットとなるからです。
そこで現在は歯科医院関連の記事執筆をメインにし、さらにWEB製作に関連した勉強も少しずつはじめています。
かつて歯科医師だった私だからこそわかる知識や経験を活かしながら、患者様と歯科医院をつなぐ架け橋になることが今の私の目標です。
これから歯科医師として活躍したい女性へのアドバイス
最後にこれから女性歯科医師として活躍される方へ、私が自分の失敗や経験から得たキャリアアップのためのアドバイスを記していきます。
キャリアプランは明確かつ具体的に
私は歯科医師を辞めたことよりも、どちらかといえば歯科医師になったばかりの頃の仕事に対する考えの甘さをいまだに後悔しています。
男女に関わらずキャリアアップしていくためには、その目標に至るまでの過程をある程度見据えておくことが大切です。しかし女性の場合は、より具体的かつ明確にプラン設計をおこなっておくべきだと思います。
これは特に将来開業を目指している女性歯科医師よりも、「開業についてはあまり考えていない」という女性歯科医師のほうに強く言えることです。
実は将来開業することを目標にしている歯科医師のほうが自身のキャリアプランに対する意識が強く、確実にステップアップする道しるべを常に探っています。
一方で特に開業について深く考えていない歯科医師は、自分が最終的にどのように働いていくのかを追及しないまま、時間の流れに身を任せがちです。
しかしその見通しの甘さが、将来自分の首を絞めることになりかねないので注意してください。
早い時期から技術を磨いておく
どんなに綿密なキャリアプランを設計しても、結婚や出産といったライフイベントまで思い通りにコントロールすることは不可能です。
したがってある程度のプランの目処がついたら、できるだけ早い時期にその達成に向けて動き出しておくほうがよいでしょう。
とにかく若いうちは知識や技術の習得に貪欲になり、来るべき次のライフステージに備えてその貯金をできるだけ増やしておくことをお勧めします。
辛抱強く、そしてあきらめない
私の周りには出産や育児を経たあとも歯科医師として大成し、現在も立派に活躍している女性が幾人もいます。しかしそんな彼女達の道も決して平坦だったわけではありません。
ある歯科医師は私と同様、数年の不妊治療を経て2人の子供に恵まれましたが、その代償として一時仕事から離れることを余儀なくされました。
しかし彼女は大学を卒業してから一度も「開業する」という目標を諦めたことはなく、予定よりはるかに時間はかかりましたが現在その夢を実現しています。
またある歯科医師は大学卒業後まもなく結婚し、ご主人の仕事の都合で海外へ移住することになります。その後2人の子供を産み育てますが、その間まったく歯科医師として働いたことはありませんでした。
しかしそれから10年以上の月日が経過して子育てに区切りがついたころ、一念発起して歯科医師として復帰したのです。
当時の彼女のキャリアは研修医レベル、年齢も40歳を間近にしての復帰となります。復帰当初はかなり大変だったようですが、それでも現在は女性歯科医師として立派に活躍しています。
彼女達に共通していることは、どんな状況下であっても辛抱強く耐え、そして歯科医師であることを決してあきらめなかったこと。
私ももしいつか「やはり歯科医師として働きたい」と思った時に、その信念を持って立ち向かえば叶うかもしれないという希望を彼女たちから与えてもらっています。
以上長くなりましたが、この記事が今後歯科医師として飛躍する女性達の参考になれば幸いです。