医師国保とは?国保・協会けんぽとの違いやメリットデメリットは?加入条件・手続き・保険料についても比較してみました

医師国保とは?国保・協会けんぽとの違いやメリットデメリットは?加入条件・手続き・保険料についても比較してみました

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目次

意外と知らない医師も多い・・・!?健康保険の違い。

普段から健康保険制度のもとで仕事をしていても、健康保険に詳しい方は少ないと思います。

保険組合によっては隠れた手当金があったり、収入や家族構成によって加入先を見なおすことで保険料を節約できることもあります。

今回は、健康保険制度について解説していくので、保険の見直しを検討している方は参考にしてみてくださいね。

医師国保と協会けんぽとの違いは?

医師国保と協会けんぽとの違いは?

通常、常勤の医師として働いている場合、勤務先の病院で「協会けんぽ」という「被用者保険」に加入していると思います。

会社員の場合は勤め先を退職して協会けんぽを脱退すると、各市町村の国民健康保険に加入しますよね。

しかし、医師の場合は勤務医が常勤先を離れた場合や、開業準備などで退職したとき、「医師国民健康保険組合」に加入することができます。

医師国保は「都道府県の医師会員であること」といった一定の加入条件がありますが、市町村が運営する国民健康保険に比べて有利な条件で保障を受けることができますよ。

医師国保とは?加入条件とメリット・デメリット

医師国保とは?加入条件とメリット・デメリット

まずは、医師国保の加入条件やメリット・デメリットを見ていきましょう。

医師国民健康保険組合は「医師およびその家族と従業員と家族のために設立された健康保険組合」で、すべての都道府県に存在します。

各保険組合は人間ドックへの補助や各種検診、保養施設との提携など、内容はさまざまです。

各都道府県の組合により、加入条件や手続きに若干異なる点があります。

医師国保の加入条件

医師国保の加入条件は、「全国医師国民健康保険組合連合会」で次のように記述されています。

  1. 都道府県医師会員であること
  2. 医療・介護を行う従業員5人未満の個人事業所の開設者・管理者、またはその事業所の業務に従事しているもの。法人事業所は認められていません。
  3. 当該県もしくは隣接県に居住していること(各都道府県によって住所範囲が相違)
  4. 75歳未満であること

都道府県によって加入条件に違いがあるわけですが、一例として東京都の医師国保を紹介しておきます。

東京都医師国民健康保険組合の場合

東京都医師国民健康保険組合の場合
第一種組合・開業医及びその診療所/クリニックに勤務する常勤医
・医療法人に勤務する非常勤医
・大学医師会に所属する勤務医
・上記の家族
第二種組合・開業医のもとで勤務する常勤および非常勤従業員
・上記の家族

医師国保に加入している開業医が、その後に法人組織に変更した場合のみ、適用除外申請の手続きを行うことで、医療法人の勤務医でも医師国保に加入することができますよ。

医師国保のメリット・デメリット

リット・デメリット
医師国保のメリット・デメリット
メリットデメリット
・保険料が安い
・給与が増えても保険料が上がらない
・社会保険料の事業所負担がない
・出産手当金と傷病手当金がない
・自家診療分の保険請求ができない
・給与が少ない場合は保険料負担が大きい
・扶養家族が増えると保険料が上がる
・世帯全員が加入しなければならない
・将来の年金は別途準備する必要がある

医師国保の一番のメリットは、国民健康保険に比べて多少保険料が安いことです。

これは「収入に関係なく、各組合員の保険料が決まっている」というのが理由です。

他職業に比べて収入の高い医師は「収入に応じて保険料が上がる国民健康保険」と比較すると保険料が安くなるケースが多いんですね。※家族構成によっては割高になる場合もあります。

また、社会保険料の事業主負担がないこともメリットとしてあげられます。

従業員が5名未満の事業所は社会保険の適用事業所ではないため、従業員が支払う社会保険料の1/2を事業所が負担する必要がありません。

一方、医師国保のデメリットは、社会保険と違って出産手当金や傷病手当金が出ないといった点です。

たとえば、従業員が病気や怪我で出勤できない場合、傷病手当金や産前産後に支払われる出産手当金の支給がありません。※都道府県により異なる場合があります。

自家診療分の保険請求ができず、家族の診療についても同様です。

医師国保は世帯単位で保険料が決まっているため、給与が少ない場合は保険料の負担が大きくなる場合があります。

扶養家族が増えるとその分保険料が上がってしまうんですね。

医師国保は世帯全員の加入が条件です。家族の中に国保加入者がいる場合、「①国保から医師国保に変更する」・「②本人を世帯から切り離し別の世帯として医師国保に加入する」といった方法があります。

協会けんぽとは?加入条件、メリット・デメリット

協会けんぽとは?加入条件、メリット・デメリット

協会けんぽは「全国健康保険協会」の略語で、「従業員5名以上の個人事業主や法人」が加入する健康保険です。

もともと、社会保険庁が運営していた「健康保険=政府管掌健康保険」というのがあり、平成20年に全国健康保険協会が設立された際にその保険業務が協会けんぽに移りました。

協会けんぽの加入条件

協会けんぽは会社(事業所)単位で適用事業所となり、法人事業所と常時5人以上の従業員がいる個人事業主が加入できます。

その事業所に常時雇用される人はすべて被保険者です。

協会けんぽに加入する際は厚生年金保険にも自動的に加入することになり、年金保険料は収入に応じて変動します。

協会けんぽのメリット・デメリット

協会けんぽのメリット・デメリット
メリットデメリット
・傷病手当金
・出産手当金がある
・自家診療の保険請求ができる
・扶養家族が増えても保険料が変わらない
・厚生年金に自動的に加入する
・給与が上がると保険料が増加する
・社会保険料の半分を負担する

協会けんぽのメリットは、保障内容が医師国保や国保に比べて手厚くなっていることです。

たとえば、傷病手当金や出産手当金の制度があり、育児休暇中の保険料支払いが免除されます。

協会けんぽは扶養家族に対する保険料負担がないことから家族が増えても保険料が変わらないため、扶養家族が多い場合は国保や医師国保よりも保険料が安くなりますよ。

一方、協会けんぽのデメリットは、給与の金額に応じて段階的に保険料が設定されていることです。

給与が増えることにより社会保険料の負担も増えてしまうわけですね・・・。

事業主になる場合は社会保険料の1/2を折半して負担することになるので、人件費が増加します。

医師国保に加入すべき?保険料を比較してみよう!

入すべき?保険料を比較してみよう!
大阪府医師国民健康保険組合 保険料(令和3年度)
種別合計①(②~④)基礎賦課額②後期高齢者賦課額③後期高齢者支援金賦課額④介護納付金賦課額⑤(40歳以上)
組合員(75歳未満)32,700円27,800円4,900円5,400円
組合員(75歳以上)5,000円5,000円
准組合員17,500円12,600円4,900円5,400円
准組合員(75歳以上)1,000円1,000円
家族15,000円10,100円4,900円5,400円

(大阪府医師国保・組合員=第一種組合員・准組合員=第二種組合員に読み替え)
※金額は概算です。制度の改正や、加入する組合によって細かい保険料は異なります。

上記は医師国保の保険料です。

基本的に医師国保は保険料を抑えやすいメリットがありますが、家族構成などによっては他の保険よりも高くなってしまいます。

やはり、他の保険と比較しなければ医師国保へ加入するかどうかの判断が難しいので、3つの具体例から保険料を比較してみましょう。

【保険料の具体例①】収入2000万円・総所得1755万円・55歳・妻

※スマホの方は横にスクロールできます

保険名月額年額
医師国保53,200円
(75歳未満の組合員:30300円+介護4500円+家族13900円+介護4500円)
638,400円
国保74,166円890,000円
協会けんぽ(標準報酬月額166万円)81,593円979,116円

収入が2,000万円ある既婚者の医師の場合、医師国保がもっとも保険料が安いです。

年額では、国保や協会けんぽに比べて約200,000円~300,000円ほどの差額なので、医師国保に加入するほうが家計に優しいですね。

【保険料の具体例②】収入1000万円・課税所得780万円・30歳・独身

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保険名月額年額
医師国保30,300円
(75歳未満の組合員)
363,600円
国保60,833円730,000円
協会けんぽ(標準報酬月額80万円)40,171円482,052円

年収1,000万円の独身医師の場合、医師国保に加入すると国保や協会けんぽに比べて月々10,000円~30,000円ほど保険料を安くできます。

【保険料の具体例③】収入1500万円・総所得1250万円・38歳・妻・子供2人の場合

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保険名月額年額
医師国保72,000円
(75歳未満の組合員:30,300円+家族13,900円×3人)
864,000円
国保60,833円730,000円
協会けんぽ
(標準報酬月額120万円)
61,528円738,336円

収入1,500万円で4人家族の医師は、医師国保に加入すると国保や協会けんぽよりも保険料が高くなります。

医師国保のメリットとデメリットで紹介したとおり、「世帯全員が加入しなければならない」や「扶養家族が増えると保険料が上がる」といったデメリットが反映されている例です。

医師の職業別による保険、加入条件やメリット&デメリットは?

医師といっても勤務医や開業医など、さまざまな職業や職種があります。

  • 勤務医
  • 開業医
  • フリーランス
  • 大学院生

それぞれの健康保険の加入条件とメリットやデメリットを見ていきましょう。

勤務医の場合

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勤務医の場合
メリットデメリット
・傷病手当金
・出産手当金がある
・自家診療の保険請求ができる
・扶養家族が増えても保険料が変わらない
・厚生年金に自動的に加入する
・給与が上がると保険料が増加する
・社会保険料の半分を負担する

医療法人の勤務医が加入する健康保険は「協会けんぽ」で、加入条件は週20時間以上の勤務となっています。

開業医の場合

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開業医の場合
メリットデメリット
・保険料が安い
・給与が増えても保険料が上がらない
・社会保険料の事業所負担がない
・出産手当金と傷病手当金がない
・自家診療分の保険請求ができない
・給与が少ない場合は保険料負担が大きい
・扶養家族が増えると保険料が上がる
・世帯全員が加入しなければならない
・将来の年金は別途準備する必要がある

開業医(個人事業主・従業員5人未満)として働く場合、あるいはその診療所やクリニックに勤務する常勤医が加入する健康保険は「医師国保」です。

医師国保は、都道府県の医師会員の医師会に加入していなければなりません。

フリーランス医師の場合

フリーランス医師の場合は「医療法人に勤務する非常勤医」となり、基本的に加入する健康保険は「医師国保」であることが多いでしょう。

大学院生医師の場合

大学院生医師の場合は「医師国保」に加入することが多いですが、入学前に勤めていた病院があれば2年間は健康保険の任意継続が可能です。

「後期研修医明けで大学院に入学」→「30代前半で専業主婦の妻と子供がいる」といった状況だと、任意継続の方が安上がりなケースがあります。

残業代や当直代で総収入は高額になりやすいですが、常勤先の本給自体はさほど高くないことから年間30万円程度の保険料で済むケースもありますよ。

宿泊補助などの福利厚生がある場合は、そのメリットも引き続き享受できます。

医師も意外と分かっていない、健康保険

今回は、医師の健康保険や保険料についてまとめてみました。

医師の保険は収入や家族構成などによって変わる部分が大きく、雇用形態がころころ変わる医師にとっては毎度転職の際に考えなければならない面倒な項目の1つです。

保険の加入先を変えれば今よりも保険料が安くなるかもしれませんし、職場の健康保険組合の案内をじっくり読めば「福利厚生が魅力的!」と意外な発見があるかもしれません。

この機会に一度ご自身の加入している健康保険について見直してみてはいかがでしょうか。

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