医師とアルバイトの深い関係について語ります・・・!
医師のアルバイトは「インターンが薄給で大学病院に寝泊まりし雑務をこなしながら、生活費を稼ぐために夜間アルバイトに走り回る」、というイメージを持っている方が多いと思います。
しかし、2004年に臨床研修制度が整備されてから状況は変わりつつあり、研修に集中できるように初期研修医のアルバイトは禁止、その代わり一定の給与が保証されるようになりました。
一見すると、若手医師の待遇が大幅に改善されたとてもいい改革のように思いますが、実はそうでもありません。
初期研修医の給料はおおよそ月額30万円程度が保証されるということで、大卒の初任給として悪くない水準です。
しかし、大学病院やブランド病院では20万円程度のところもあり、アルバイトでしっかり稼げていた昔のインターンの半分以下というケースもあります。
また、初期研修医の待遇については改革が行われたものの、初期研修医以降の給料については国からの補助などもありません。
現状は、初期研修医以下の給料で働かされている後期研修医がたくさんいます。
後期研修医になるころには30歳前後の年齢ですが、日給1万円程度で昼夜も土日も働くのは割に合わないと感じる人もいるでしょう・・・。
まじめに医師として研鑽してキャリアを積みたいと思っている医師ほど、経済的には不遇な環境に甘んじなければならないのが医師の世界の特殊な部分です。
今回は、切っても切れない医師とアルバイトの関係性についてまとめてみました。
医師はいつからアルバイトができるのか?
「医師はいつからアルバイトができるのか?」について臨床研修制度と合わせてみていきましょう。
基本的には初期研修を終えてから
医師がアルバイトを始められる時期については、医師法第16条の文言を見てみましょう。
医師法第16条の2:「診療に従事しようとする医師は、臨床研修を受けなければならない」
医師法第16条の3:「臨床研修を受けている医師は、臨床研修に専念し、その資質の向上を図るように努めなければならない」
簡単に説明すると、「臨床研修が終了するまでは(単独で)診療行為をしてはいけないし、研修に専念するためにアルバイトは禁止」ということです。
医学部での6年間の課程を修了して医師国家試験に合格すると、多くの場合は医師として2年間の初期臨床研修がスタートします。
初期研修では研修医の受入先の病院側がおおむね月額30万円の給料を保証する代わりに、研修医のアルバイトを禁止して研修に専念することになっているのです。
もちろん、初期研修医は「研修医」ではありますが、免許を持った立派な医師であり、指導医の管理下で診療を行うことは認められています。
指導医やローテート先の医師とともに当直に入る場合や救急の補助に入る場合など、諸手当をつけて研修も兼ねて収入面の補完をしていることもありますが、これは一般の会社における残業手当と変わりません。
研修2年目以降に収入を増やしたい研修医は、QOLを大事にしたい同期の当直をもらって月50万円以上を稼ぐケースもあります。
ただし、基本的には「初期研修を終えてから」が大手をふってアルバイトを始められる時期なのです。
実は初期研修医でもアルバイトができる
初期研修医は指導医の管理下以外では保険医としての診療行為は禁止されており、また研修に専念するためにも他の病院でアルバイトはできないことになっています。
しかし、実はアルバイト先が無いわけではなく、コンタクトレンズのバイトなど、保険診療ではない領域でアルバイトをしている研修医はいます。
ただし、通常は職場にばれると「研修に専念していない」と言われてしまいますから、叱られる覚悟は必要かもしれません。
学生時代から続けていた家庭教師など、医師と関係ない職種の仕事を続けたいという方も時折見かけます。
医師として診療を行わないので問題なさそうですが、こちらも「臨床研修に専念」していないことになるので気をつけたほうがいいでしょう。
大学病院勤務時のアルバイト
一般的に初期研修が終わるとアルバイトは可能ですが、これは勤務先によって異なります。
また、大学病院に勤務すると、一般病院での勤務時に比べて年収が下がります。
昨今では、完全無給という状況は少なくなってきましたが、依然として雀の涙ほどの給与しかでないことが多いため、アルバイトしなければ生計が成り立ちません。
基本的には医局から固定のアルバイト先をもらい、大学病院という後ろ盾のおかげで比較的条件のいいアルバイトが回ってくることも多いです。
「大学から30万」+「アルバイトで50万」など、大学からもらう本給の1~2倍程度の収入をアルバイトで稼ぐという形が一般的です。
国公立病院勤務時のアルバイト
国公立病院に勤務している場合は公務員となるため、副業は法律で禁止されています。
病院に内緒でアルバイトを行っている場合、懲戒解雇のリスクがあるので注意しましょう。
住民税の額や勤務先のスタッフからの問い合わせなどで、副業していることがバレてしまうケースがあります。
基本的に公務員という身分である場合は、医師として副業をするのは諦めた方が無難です。
リスクを背負って副業するよりも、不動産投資や会社を妻名義で立ち上げるといった他の選択肢のほうが現実的ですよ。
準公的病院勤務時のアルバイト
独立行政法人のように準公的病院に勤務している場合でも、「公務員に準じた扱い」によって副業が禁止されていることも多々あります。
ただし、病診連携や集患のために近隣のクリニックや病院に週半日程度行くことができる場合はあります。
後期研修医くらいまでは常勤でない場合もありますから、勤務時間外はアルバイトをしても問題無い場合もありますよ。
医師バイトの種類
これからアルバイトを始める若手医師向けに、アルバイトの種類と相場を紹介していくので参考にしてみてくださいね。
外来バイト
外来バイトは外来診察に非常勤として入り、相場は外来人数や診療科によって異なります。
- 時給:1万円~1万5千円
- 半日:4万円~5万円
- 終日:8万円~10万円
流行っているクリニックなどでは、もう少し色をつけてくれることもありますよ。
外来バイトは忙しい現場が多いため、普段使わないメーカーの電子カルテや医療機関特有の診療方針など、いかに早く慣れるかというところがポイントです。
健診バイト
健診バイトは、会社や学校にいって健康診断を行います。
基本的に時給1万円が相場、数が多い案件では時給2万円の案件もありますよ。
健診バイトは季節性があってさまざまなところで働けるため、旅行を兼ねて行う人もいます。
透析バイト
透析バイトは透析の管理を行う仕事で、医師バイトの中でも「楽で高給」として有名です。
基本的に穿刺は技師さんがやってくれることが多いことから「1日2回、15分程度の回診をするだけ」なので、あとは控室で学会のスライド作りや映画鑑賞などで過ごすことができます。
時給は「8千円~1万2千円程度」が相場、それでも3クールやっている場合は10時間以上の勤務なので、日額としてはそれなりの金額を稼げます。
読影バイト
読影バイトは、レントゲン画像やCT画像の読影を行う仕事です。
循環器内科では心電図の判読バイトなどもあり、時間単位で支払われるタイプと読影した枚数に応じて支払われるタイプがあります。
救急当直バイト
救急当直バイトは、救急病院の当直に入る仕事です。
救急病院といっても標榜だけの病院やかかりつけだけの病院などさまざまなので、「救急は断らない」として休む間もなく救急患者を捌き続けなければならないこともあります。
当直料の他に受入件数や入院件数によりインセンティブが付くケースもありますが、大抵は気持ち程度です。
「1晩5万円」ならほぼ呼ばれない寝当直バイトに近く、「1晩8~10万円」なら寝る暇がない案件だと考えるとよいでしょう。
土曜午後から月曜朝まで丸々働くと20万円以上は稼げますよ。
寝当直バイト
寝当直バイトは、療養病棟などでの当直に入る仕事です。
丸1日で8~12万円程度が相場です。
オンコールバイト
オンコールは、「基本給」+「インセンティブ(訪問1件あたり1万円など)」の仕組になっています。
1日基本2万円で出勤1回1万円~1万5千円程度が相場です。
自由診療バイト(AGA・美容)
自由診療バイトは、AGA治療や脱毛など美容系の自由診療を行う仕事が多いです。
少し効果の怪しい免疫療法やビタミン注射を行うクリニックもあるので、人によって向き不向きがあります。
基本的に労働負荷は低めですが、営利目的のクリニックが多いことからアルバイトの医師に金払いがいいクリニックは多くありません。
時給は大抵1万円です。
大学院生へのお勧めアルバイト
大学院生として基礎研究にどっぷりつかっていると、昼も夜も無く実験しなければならないことが多いですよね。
週1回バイトに出るだけで年収400~500万円ほどは稼げますが、普通に働いている同年代の医師と比較すると3分の1程度の給料なので、ちょっと悲しくなることもあります・・・。
そんな大学院生医師にお勧めなのが、在宅診療のオンコールバイトです。
オンコールバイトは「クリニックで待機しなければならない実質当直タイプ」と「自宅待機可能なタイプ」があるので、どちらにするか迷うなら後者がオススメですよ。
大抵、在宅診療は「電話対応」か「訪問看護師で対応」なので、どうしても医師が出なければならないのは看取りの場面くらいです。
呼ばれるまでは何をしていも問題ないため、当直より単価は下がるものの、実験生活との両立がしやすいアルバイトです。
もちろん、定番の寝当直のアルバイトもあります。
研究室での生活も長くなり「たまには実験から解放されたい・・・!」という方は、他の病院に寝当直バイトへ行くのはいい気分転換になるかもしれませんね。
医師はいつまでアルバイトをするのか
医師のアルバイトは若手だけの仕事ではなく、教授になってもアルバイトをすることは珍しくありません。
何故なら、教授になってからのアルバイトは驚くほど高報酬だからです。
関連病院に教授が出向いて外来や指導を行う場合、その報酬は1日あたり30万円~50万円程度と高額な給与を稼げます。
関連病院側も教授に優秀な医師を派遣してもらうために教授を厚遇することが多いため、週一回の診察でも年間では1,000万円以上です。
教授の中には講演会や原稿料で稼ぐ教授もいます。
1回あたり5万円~30万円というのが相場ですが、仕事内容は「製薬会社が用意した原稿やデータをチェックするだけ」というおいしい仕事もあるようですよ。
切っても切れない医師とアルバイトの関係
研修医から教授まで、医師とアルバイトは切っても切れない関係です。
若手の医師にとっては生活を維持するためにアルバイトは必要であり、本業の勤務先で十分な収入を得られるまでは何かしらのアルバイトを続けなければなりません。
一方病院や診療所にとっても、アルバイトの存在は不可欠です。
労働契約の制限やそれぞれ専門化した診療科の中では、常勤医師だけで病院を運営することはできないため、非常勤医師をスポットで活用しなければならないという現状があります。
そう考えると、アルバイトは医師の収入を補うものという意味だけでなく、それぞれの医師の能力や労働力を流動的に活用できる仕組みとして、医療を効率的に提供するために大切な存在なのかもしれません。